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【重曹ローディング】Maurten Bicarb Systemの効果とは?サブスリーランナーが論文から徹底考察

47都道府県マラソン制覇を目指しているSHISHIです🦁

「重曹でランニングが速くなるらしい」

最近、海外のランニングポッドキャストやSNSでこんな話をめちゃくちゃ見かけるようになりました。

「重曹って、あのキッチンにある重曹?」って思いますよね。僕も最初は半信半疑でした。

でも調べてみると、パリ五輪のランニングメダリストの3分の2以上が使っていて、2025年2月には8日間で7つの世界記録が更新された裏側にもこの「重曹」があったようです。これは気になりすぎます。

今日は「重曹ローディング(Bicarb)」について、論文やエビデンスをもとに、サブスリーランナー目線でわかりやすくまとめます。

目次

そもそも「重曹ローディング」って何?

① 一言でいうと「筋肉が酸性になるのを遅らせる補給」

重曹ローディングとは、運動の前に炭酸水素ナトリウム(Sodium Bicarbonate=いわゆる重曹)を摂取して、血液のバッファリング能力(緩衝能)を高めるという手法です。

スポーツ科学の世界では1930年代から研究されてきた歴史あるエルゴジェニックエイド(パフォーマンス向上補助食品)で、カフェインやクレアチンと並んで、科学的にエビデンスが認められている数少ないサプリメントのひとつです。

② なぜ重曹で速くなるのか

ランニングで高強度の運動をすると、無酸素性代謝(解糖系)の副産物として水素イオン(H⁺)が筋肉内に蓄積します。これが筋肉のpHを下げて(酸性化させて)、いわゆる「脚が動かなくなる」状態の一因になります。

重曹を事前に摂取すると、血液中の重炭酸イオン(HCO₃⁻)が増えて、筋肉内のH⁺が血液中へ効率よく排出されるようになります。

つまり、「脚が止まるタイミングを後ろ倒しにしてくれるバッファー」として機能するわけです。

よくある誤解 「乳酸が悪者」とよく言われますが、乳酸自体はエネルギー源です。本当の疲労原因は、乳酸が作られる過程で発生する水素イオン(H⁺)による筋肉の酸性化(アシドーシス)。重曹はこのH⁺を中和してくれます。

なぜ今、世界中で話題になっているのか

① これまでの最大の壁:胃腸トラブル

重曹の効果自体は昔から知られていました。でも最大の問題が深刻な胃腸トラブルだったようです。

効果を出すには体重1kgあたり0.3g程度(体重60kgなら18g)もの重曹を飲む必要があります。重曹は強アルカリ性なので、胃酸と激しく反応して、吐き気・嘔吐・下痢・膨満感を引き起こしてきました。

レース前にお腹を壊しては本末転倒ですよね笑

② Maurtenが「使える重曹」を作った

この「効果は確実だけど使い物にならない」というジレンマを解決したのが、スウェーデンのスポーツ栄養ブランドMaurten(モルテン)が2023年に発売した「Bicarb System」です。

Maurtenは僕たちランナーにはジェルやドリンクミックスでお馴染みのブランドですよね。そのMaurtenが看板技術のハイドロゲルテクノロジーを重曹に応用して、胃腸トラブルを大幅に軽減することに成功しました。

③ エリートランナーの間で爆発的に普及

NBC Newsの報道によると、マラソン世界記録保持者のキプチョゲもMaurten製品を使用して複数の世界記録を樹立しています。

Maurten社によれば、2023年の世界陸上では800m〜10,000mのメダリストの3分の2がBicarb Systemを使用。パリ五輪でもランニング種目のメダリストの3分の2以上が使用していたとのこと。

もはやエリートランナーの間では「当たり前の補給」になりつつあります。

  • ハイドロゲル技術: 胃に負担をかけず、腸で素早くエネルギーを吸収できます
  • 高濃度エネルギー: 1袋で40gの炭水化物を効率よく補給し、失速を抑えます
  • 天然成分のみ: 香料や保存料不使用。ランナーの繊細な胃腸にも優しい設計です

Maurten Bicarb Systemの仕組み

① ミニタブレット化で胃酸との反応を最小化

従来の粉末と違い、重曹を極小サイズのミニタブレットに成形しています。表面積を減らすことで胃酸との反応面を抑え、カプセルのように胃に留まることなくスムーズに腸へ移動する設計です。

② ハイドロゲルで包み込んで腸まで運搬

Maurtenの看板技術であるハイドロゲルテクノロジーでミニタブレットを包み込みます。ハイドロゲルが胃酸に触れるとゲル状に固まり、重曹を保護しながら腸まで運搬。腸内で徐々に崩壊して、重曹が溶解・吸収される仕組みです。

③ 3つのコンポーネント構成

Bicarb Systemの中身を確認してみました。

  • Component A(ボウル):専用ミキシングボウル。作り方がプリントされていて便利
  • Component B(ハイドロゲル):特別処方のハイドロゲル粉末。1食あたり約40gの炭水化物も含有
  • Component C(重曹):ミニタブレット化された炭酸水素ナトリウム。体重に応じて12g/15g/19gの3種類

科学的エビデンス:論文で見る効果

ここからがこの記事の核心です。「話題なのはわかった。でも本当にエビデンスあるの?」という疑問に、主要な論文を紹介しながら答えていきます。

① ISSN公式ポジションスタンド(2021年)

国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、体重1kgあたり0.2〜0.5gの重曹摂取が、**高強度の運動(30秒〜12分程度)**において筋持久力・サイクリング・ランニング・水泳・ボートなどのパフォーマンスを向上させると正式に結論づけています。

ISSNがポジションスタンドを出しているサプリメントは少なく、これだけでもかなり信頼度が高いです。

② アンブレラレビュー(2021年)

複数のメタ分析を統合した「アンブレラレビュー」では、無酸素性パワー、45秒〜8分の持久力イベント、筋持久力、高強度間欠的ランニングで効果が確認されています。効果量は0.36〜0.40(小〜中程度の効果)。

③ 5kmランニングでの研究

Maurten Bicarb Systemを使った5kmタイムトライアルの研究が特に興味深いです。8名の男性ランナーのうち7名がプラセボより速く走り、平均で約17秒の短縮(17.94分→17.65分、p=0.026)。しかも胃腸トラブルはほぼゼロ。

5kmで17秒って、めちゃくちゃ大きいですよね。

④ 40kmサイクリングタイムトライアル(2024年)

14名のサイクリスト対象の研究では、プラセボ比で約1.5%のタイム短縮。従来の重曹ローディング研究と同等の効果が確認されています。

⑤ 2025年最新メタ分析

2025年発表の持久走メタ分析では、全体の効果は小さい(SMD 0.18〜0.29)ものの、男性のみでは有意な効果(SMD=0.40, p<0.001)が確認。ただし出版バイアスの指摘もあり、結果の解釈には注意が必要です。

研究対象主な結果胃腸トラブル
5km TT研究男性8名平均17秒短縮(p=0.026)ほぼなし
40km サイクリングTT男性14名約1.5%タイム短縮プラセボと差なし
持久走メタ分析(2025)複数研究統合男性でSMD=0.40
大学XC研究男女8名有意差なし回避に成功

現時点での研究の限界

  • Maurten Bicarb Systemに特化した研究はまだ少ない(主にサイクリスト対象)
  • ランナーを対象とした研究は限定的
  • 女性アスリートのデータがほぼない
  • マラソンなど長時間持久イベントのエビデンスは不十分

サブスリーランナーにとっての現実的な効果は?

ここが一番気になるところだと思います。

① マラソン本番への効果は正直「限定的」

ISSNの見解でもMaurten自身の説明でも、重曹の効果が最も期待できるのは無酸素閾値付近〜それ以上の高強度運動です。マラソンは基本的に有酸素運動が主体なので、42.195kmの全体タイムへの直接的な効果は薄い可能性があります。

ただし、サブスリーレベルでは4:15/km前後で巡航していて、30km以降のペース維持やラスト5kmのスパートでは無酸素系をかなり動員します。その場面でバッファリング効果が効く可能性はゼロではないと僕は思っています。

② 本当に効果が出そうなシーン

サブスリーランナーにおすすめの活用シーン

  • 5km・10kmレース:無酸素閾値を超える強度が多く、最もエビデンスが豊富
  • インターバルトレーニング:閾値〜VO2max強度のセッションで追い込みの質を上げる
  • ハーフマラソン:キロ4分を切るペースでは無酸素系の貢献が増える
  • 高地トレーニング:低酸素環境ではアシドーシスが増大するため、緩衝効果が期待できる

個人的には、5kmやハーフのPB狙いのレースで試してみたいと考えています。

具体的な使い方と摂取プロトコル

STEP
適切なサイズを選ぶ

体重と使用経験に基づいて選択。初回は0.25g/kg以下から。経験者は0.3g/kgまで。Maurten公式サイトに計算ツールがあります。

STEP
運動の1.5〜2時間前に摂取

朝食などの食事から1〜2時間後が最適。タブレットが腸に届いて吸収されるまでの時間を確保します。

STEP
ボウルに水200mlを入れ、ハイドロゲルを混ぜる

フタをして15秒ほど振り、5分間放置してゲル状に。

STEP
ミニタブレットを加えて、すぐに飲む

スプーンで優しく混ぜて、噛まずにそのまま飲み込む。透明でとろみのある状態が正解です。

注意点・副作用・リスク

ハイドロゲル技術で大幅に改善されたとはいえ、完全にリスクフリーではありません。

知っておくべきリスク

  • 胃腸トラブル:従来法より大幅に軽減されるが、膨満感やガスが出る人もいる
  • ナトリウム過多:1回で3,300〜5,200mgのナトリウムを含む。使用日は追加のナトリウムサプリ不要
  • 水分貯留・体重増加:ナトリウムの影響で一時的にむくむ可能性がある
  • 血圧への影響:高血圧の方は使用前に医師に相談を
  • 18歳未満は使用禁止:Maurtenが明記しています

Bicarb SystemはInformed Sport認証を取得していて、WADA禁止物質は含まれていません。ドーピングの心配はないので安心してください。

日本での入手方法

日本ではMaurten公式オンラインストアや一部のランニング専門店で購入できます。

  • ハイドロゲル技術: 胃に負担をかけず、腸で素早くエネルギーを吸収できます
  • 高濃度エネルギー: 1袋で40gの炭水化物を効率よく補給し、失速を抑えます
  • 天然成分のみ: 香料や保存料不使用。ランナーの繊細な胃腸にも優しい設計です

まとめ:重曹ローディングは「買い」なのか?

  • 重曹ローディング自体はISSNも公式に推奨する、エビデンスのあるパフォーマンス向上手法
  • Maurten Bicarb Systemは最大の壁だった胃腸トラブルを大幅に軽減した革新的な製品
  • 効果が最も期待できるのは5km〜10kmレースやインターバルトレーニング。マラソンでは限定的かも
  • 研究はまだ発展途上。特にランナーや女性のデータが不足している
  • 1回約4,050円と高額。勝負レースに絞って使うのが現実的

僕自身、次の5kmやハーフマラソンのPB狙いで実際に試してみるつもりです。使ったらまた体験レビューも書きますね。

重曹という「キッチンにあるもの」が、ランニングの世界記録を塗り替える裏側にあったという事実。ちょっとワクワクしませんか?

気になった方は、まずは練習で試してみてください🦁


参考文献・出典

  1. Grgic J, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: Sodium Bicarbonate and Exercise Performance. J Int Soc Sports Nutr. 2021.
  2. Grgic J. Effects of Sodium Bicarbonate Supplementation on Exercise Performance: An Umbrella Review. J Int Soc Sports Nutr. 2021.
  3. Navarro SQ & Joubert DP. Effect of Maurten Sodium Bicarbonate System on 5k Running Performance. Western Kentucky University.
  4. PMC. Physiological Effects of Sodium Bicarbonate Ingestion via Maurten Bicarb on Endurance Running Performance. 2025.
  5. PMC. Negligible Benefit of Oral Single-dose Sodium Bicarbonate on Continuous Running Performance. 2025.
  6. NBC News. The Household Item Turning Runners Into World Record Holders. 2025.
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